休日に一日中プレーして最初のボスすら倒せない
(このレビューは私がダイナマイト・キャットというニックネームで2018年11月1日、アマゾンに投稿したものと同じ内容です)
第一印象は理不尽なゲーム。
とにかく難しい。
死んで死んで死にまくります。
敵は常に全力でプレーヤーを殺しにきます。手加減というものを知りません。
執拗で底意地が悪く、怒りを通り越して呆れてしまうほどです。
ほぼ一日かけて、なんとか最初のボスまで辿り着きましたが、
そいつと戦って心が折れました。
まず、ボスキャラの体力ゲージが尋常ではない。
プレーヤーの体力ゲージは、かっぱえびせん程度の長さですが
ボスキャラの体力ゲージときたらスパゲッティ1本分くらい。
ほぼ6倍の長さです。
さらに、信じられないようなスピードで攻撃を仕掛けてきます。
避けることも反撃することも出来ず、何がなんだかわからないうちに死亡。
もう、絶望感しかありません。
これが最初のボス?
このゲームを作った人は頭がおかしいんじゃないでしょうか?
とても付き合っていられません。
翌日ゲームを売りました。
でも、売ってしまった後で、あの圧倒的な緊張感が無性に恋しくなりました。
一歩一歩地面を踏みしめて歩く感覚。
一瞬たりとも油断できないドキドキ感。
あんなスリルは滅多に味わえるもんじゃない。
あれはまるで……そう、お化け屋敷だ。
あの感覚を、もう一度味わってみたい。
私は同じ店に行って、もう一度ブラッドボーンを購入しました。
前回購入したものは通常のブラッドボーンでしたが新たに購入したものは追加コンテンツを収録した完全版とも言えるブラッドボーン ジ・オールドハンターズエディションです。
最初のボスすら倒せない人間が、なぜ完全版を買うのか?
自分でもよくわからない。
たぶん決意表明なのだと思います。
前回は軽い気持ちで何となく買いましたが
今回は本気です。
本気で、あの異常な世界と向き合おう。
そう決めたのです。
果たしてどうなるのか?
人間、本気で取り組めば大抵の困難は乗り越えられるものです。
結論を言うと協力プレー無しのソロで本編、追加コンテンツ共にトロフィーをコンプリートしました。
全クリして分かったことがあります。
それはこのゲームで一番難しいのは最初のエリア、ヤーナム市街だということ。
通常のゲームは序盤が簡単で徐々に難しくなっていきますがブラッドボーンの場合、
序盤が一番難しい。
はっきり言って狂ったゲームです。
獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす、
という俗信がありますが、まさにアレです。
このゲームの制作者はヤーナム市街で心が折れるプレーヤーなど相手にしたくないのでしょう。
今時めずらしいスパルタ式。
鬼?
それともこれは愛のムチ?
学校の教師にしろ職場の上司にしろ、新しく入ってきた者には寛大に接するのが一般的です。
徐々にハードルを上げ少しずつ能力を伸ばしていく。
最初は簡単で、だんだん難しくなっていく。
それが正常な姿であり効率的であると思われます。
でもよくよく考えてみると現実世界において最も難しいことは最初の一歩、
第一関門を
突破することではないのか?とも思います。
学校の教師や職場の上司は新人に対していろいろと大目に見てくれます。
徐々に厳しくなり、より高いスキルを要求してきます。
普通に考えれば、あきらかに最初より後になればなるほど難しくなっていきます。
でも当の本人にとって最も苦しいのは第一関門の突破ではないでしょうか?
新しい環境に適応し、そこでやっていくための最低限の能力を身につける。
その段階に到達するのは結構大変です。
第一関門さえ突破すれば、その後はなんとかやっていけることが多いような気がします。
もちろん高みを目指すには日々努力する必要がありますが第一関門さえ突破すれば
それで自信がつき、もう少し先に進んでみよう、という気分になります。
もう少し先へ、もっと先へ。
やがて努力が苦しみではなく、喜びに変わっていきます。
ブラッドボーンもまさにそんな感じ。
ヤーナム市街さえ突破すればあとはどうにかなります。
もちろん後半のボスが弱いわけではありません。度肝を抜くボスが次から次へと現れます。
でもヤーナム市街を突破するガッツがあれば後半のボスなど脅威ではありません。
むしろ、かかってこい、という感じ。
人生における第一関門突破の重要性。
ブラッドボーンの制作者が若いプレーヤーにそれを伝える為この難易度設定にしたのなら、
とても素晴らしい作品だと思います。
私と同じようにヤーナム市街で心が折れ、ソフトを売ってしまった方は大勢いるはず。
そういう方はもう一度挑戦してみてはいかがでしょうか?
もちろん「全然面白くなかったから売った」という方に勧めるつもりはありません。
全く興味が湧かないものに力を注ぐのは無駄です。
それはゲームの世界でも現実世界でも同じ。
自分が好きだと感じられる世界を見つけて、そこで頑張った方が楽しいし効率的です。
私と同じように「ブラッドボーンには無性に惹かれるものがあるけれど、難しすぎるからやめた」
という方には、ぜひもう一度挑戦していただきたい。
まずは主人公のレベルを上げ、武器を強化してください。
そうすれば今までの苦労が嘘のように先へ進めます。
このゲームをクリアすれば、現実世界で困難に直面した時、
「自分は今ヤーナム市街にいる。努力してここさえ突破すれば、きっと新しい道が開ける」そんな風に
思えるはずです。
「今さらブラッドボーン?」
そう言う方も多いでしょうが新作ソフトと比べても全く遜色のないゲームです。
むしろこっちの方が凄い。
PS4には面白いゲームがたくさんありますが心を揺さぶられるゲームはそれほどありません。
私が思いつくブラッドボーンと肩を並べられるゲームはニーア オートマタくらいです。
二作品とも映像のクオリティーはPS3に毛が生えた程度ですが、そんなことは問題では
ありません。
ゲームにとって一番大切なものは圧倒的な映像美ではなく、
『心を揺さぶる何か』
なのだということを改めて教えてくれたのが
ブラッドボーンとニーア オートマタです。
ブラッドボーン未プレーの方で、
「実は、ずっと気になっていた」という方にもぜひ挑戦していただきたい。
あなたにとって、このゲームが有意でありますように。
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