これぞ日本!これぞ侍!
ここ数年の純和風剣戟ゲームの傑作といえば、『セキロ』と『ゴースト オブ ツシマ』の二作が、真っ先に思い浮かびますが、そこに『ライズ オブ ローニン』が加わり、三強状態に突入したような感じです。
それぞれのゲームに長所と短所があり、どれが一番面白いかは人によって違ってくると思いますが、個人的な意見を言わせてもらうと『ライズ オブ ローニン』が一番面白いです。
『セキロ』もトロコンするほどハマりましたが、あれは難度が高すぎて精神衛生上よろしくなかった。
ボスを一人倒すのに3時間くらいかかり、数えきれないほどの『死』を体験するので、面白さよりストレスが上回ります。何でこんな苦行みたいなことをしなきゃならないのか全然わからなかったし、何度も発狂寸前まで追い詰められ、心身ともに深いダメージを負いました。それでもトロコンまでプレイしてしまったのはアクションゲームとして突出した個性があり、イライラするけどやめられない中毒性があり、黒澤明の映画のような重厚な雰囲気や世界観に魅了されてしまったからです。
『ゴースト オブ ツシマ』は、セキロと比べると難度がグッと下がり、ストレスフリーで純和風剣戟アクションを楽しめるところが素敵でした。なんといっても、このゲームを作ったのが外国人だというのが驚きでした。外国人が作るサムライゲームやサムライ映画は中国とモンゴルと日本がごちゃ混ぜになったような作品が多く、日本人の目で見ると激しい違和感を覚えたものですが、『ゴースト オブ ツシマ』は日本人が見てもほとんど違和感のない侍や、日本の風景が描かれていました。ただし、見かけはほぼ完璧な日本の姿でしたが、正直に言うとほんの少し違和感がありました。言葉で表現するのは難しいのですが、日本人の目で見た日本の『美』ではなく、外国人の目で見た日本の『美』が描かれているような……。
日本人と外国人の感性の違いが映像に如実に表れているような……。まぁ、ほとんど気にならないレベルですが気になりだすと凄く気になるという何ともムズムズした気分……。
『ツシマ』の剣戟アクションは、ほど良い難度で、それなりに爽快感もありましたが『セキロ』のような突出した個性はなく、はっきり言って、ありきたりでした。間違いなく『ツシマ』も純和風剣戟ゲームの傑作ですが、個人的には『セキロ』の方が好き。
そして第三の勢力として登場した『ライズ オブ ローニン』ですが、これが本当に凄かった。
風景、建物、人間、すべてが、
「これぞ日本!」という感じ。
誇張や違和感のない、ありのままの日本の姿がそこにはありました。
『ライズ オブ ローニン』こそ純和風剣戟ゲームの最高傑作だと思います。
『ローニン』の剣戟アクションにも突出した個性はありませんが、使用できる武器種が多く、剣術や槍術の流派も北辰一刀流、柳生新陰流、立身流、神道無念流、鏡新明智流、示現流、天然理心流、宝蔵院流、種田流、自得院流等々たくさんあり、同時に装備できる武器も近接用が二種類、遠距離用が二種類あり、さらに流派も複数同時に装備可能で、切り替えもスムーズ。難易度も変更でき、アクションも華麗。
戦闘が無性に楽しいです。着物の種類も豊富で、見た目だけ変える『重ね着』もできます。剣術の流派に忍術系もあり、それを装備して外見も忍者風にすれば忍者になりきって戦うことも可能。
新選組の隊服を着れば新選組隊士になりきることもできます。他にも甲冑一式装備や町人風装備、侠客風装備、浪人風装備、武芸者風装備など様々な種類があり、その日の気分で主人公の雰囲気をがらりと変えることができます。
簡単なモードでプレイすれば敵をバッサバッサと斬り伏せる剣豪気分が味わえます。
最高難度の『暗夜』(クリア後に選択可能)にするとストレスフルで理不尽な死にゲーとして遊ぶことも可能。
本作は横浜、江戸、京都の三つのマップで構成されており、すべてがシームレスに繋がったオープンワールドではありません。広大なマップがシームレスに繋がったオープンワールドが、もてはやされる傾向にありますがシームレスに こだわらず敢えて三つのエリアに分けたところが清々しい。
『シームレスに繋がった広大なマップ』そう聞くといかにも魅力的な雰囲気がありますが、いくら広大でも何もないスカスカな風景がただ続いているだけでは歩いていてちっとも楽しくありません。実際、そういうゲームが散見されます。広ければいいというものではありません。その点、『ローニン』は、それぞれのエリアが濃密に作り込まれており散策が楽しいです。十分な広さもあり、プレイしていて狭いと感じることもありません。
ゲーム開始地点の横浜は中華街、外国人居留地などがあり、異国情緒あふれる街並みが広がっています。
ストーリーが進むと、江戸と京都にも行けます。
まるで、タイムマシンに乗って幕末に行ってしまったような気分。
幕末に生きる人々や志士たちと出会い、交流を深めることもできます。
本で読んだり歴史で習ったりした人物と親しくなれるので興奮します。
この時代の人物は写真が残っている人も多いので、写真とそっくりな人と、あまり似ていない人がはっきりと分かります。最初は違和感を覚えた人も、会話を重ねていくうちに「この人は実際こんな人だったのかもしれないなぁ~」と思わせる魅力があります。
過去にも幕末を題材にしたゲームはたくさんありましたが、幕末の志士たちを『生身の人間』として活き活きと描いていた作品は少なかったような気がします。『ライズ オブ ローニン』に登場する志士たちは、とても人間臭く、この時代に生きた、血の通った人間という感じがビンビン伝わってきます。
幕末といえば勤王派と佐幕派の二つの思想が特に有名ですが、どちらが正しかったのか正直、私には分かりません。幕府にも様々な問題点があり、あのまま日本を統治し続けるのは良くなかったような気もしますが、新政府も胡散臭いところがたくさんあります。
結局、明治維新とは何だったのか?
権力を失いたくない人たちと権力を奪いたい人たちとの戦いに過ぎなかったのでは?
そう思ってしまうこともあります。
もちろん勤王派にも佐幕派にも本気で日本の将来を憂い、私心を捨て、世のため人のためと信じて尽力した人もいたことでしょう。
そういう人たちの熱量、熱意、情熱は素直に凄いと思います。でも、どうも私にはいまいちピンときません。ゲームをプレイしていると勤王派か佐幕派か、どちらかを選べ!
と迫られますが私はどちらも選びたくない。
『どっちもイヤ派』です。
どっちもイヤなら他に何か良い考えがあるのか?と問われそうですが、そんなものもありません。
そもそも私は普通に生活ができて自分の好きなことをまったりやっていればそれで満足なのです。
世の中を変えるとか、大成功を収めるとか、後世に名を残すとか、そういう野心はありません。
「そんなことを言って、何も行動を起こさなければ普通の生活すらおくれなくなるぞ!勤王派か!それとも佐幕派か!選べ!」と言われてしまうかもしれませんが、そんなことを言われても困ります。
そんなわけでゲーム中も成り行きに任せて勤王派についたり佐幕派についたり、自分でも「なんだその節操のなさは!?」と呆れてしまう展開になりました。そんなことをしていたら勤王派にも佐幕派にも睨まれ、悲惨な末路を辿りそうですが、このゲームの場合、曖昧な態度が何故か許されます。
あっちにフラフラ、こっちにフラフラ、様々な人たちとたくさん交流できて「なんか変だけど、まぁ、ゲームとして楽しいからいいか……」という感じ。史実とは異なる点もありましたが、そんなことは気にならないほどストーリーにグイグイ引き込まれました。
風景のクオリティーは、「やや微妙」。
PS5なら、もっと綺麗にできるのでは?と思ってしまうレベルです。
最近プレイした『ドラゴンズドグマ2』が写実的な風景だったので尚更そう感じたのかもしれません。
ただし十分許容範囲です。
決して物足りないわけではありませんが、欲を言えば、もう少し綺麗な方がよかったかな~という程度。
実写寄りではなく、やや粗さのある風景が歌川広重の東海道五拾三次や名所江戸百景を彷彿とさせ、むしろ好ましいような気もします。ゲームをプレイしていると突然雨が降ってくることもありますが、雨に戸惑う人々の姿が『大はしあたけの夕立』や『庄野 白雨』のようで、グッときました。
このゲームの最大の特徴を挙げるとしたら
ズバリ『親切設計!』これに尽きます。
ファストトラベルは使い放題。
移動は馬で楽々快適。
高所から飛び降りても折りたたみ式グライダーが瞬時に開くので落下死することもありません。
取返しのつかない要素もない為、トロコンも比較的簡単。
ゲームをクリアすると過去の任意のポイントにいつでも戻ることができるので簡単にやり直しができます。
まるでドラえもんがそばにいてくれるような安心感。
「はい、タケコプター!」
「はい、どこでもドア!」
「はい、タイムマシン!」
そんな感じ。
こんなに甘やかされて大丈夫なんでしょうか?
まさに至れり尽くせり。超快適で超面白い。
限りなくパーフェクトに近いゲームです。
一つだけ欠点を挙げるとしたら、『ライズ オブ ローニン』ならではの独特なゲームシステムが無かったところ。はっきり言ってしまうと『ローニン』は今までのゲームの『いいとこ取り』をしたようなゲームです。『セキロ』『ゴースト オブ ツシマ』『アサシンクリード』『バットマン』その他色々。
今まで発売された様々なゲームのいい所を集めて一つのゲームにしたような印象です。
無能な開発スタッフがそんなゲームを作ったら継ぎはぎだらけでバランスの悪いクソゲーが誕生しそうですが、そうならなかったところに開発スタッフのレベルの高さが窺えます。様々な要素が見事にまとまり、全体のバランスのとり方も絶妙。ただのパクリではなく、独自のアレンジが施されている点も好感が持てます。映像、アクション、ゲームシステム、キャラクター、ストーリー、全てが、ハイレベルで丁寧に作り込まれており、隙がほとんどありません。このゲームの開発スタッフは、ただもんじゃないですね。
個人的には今まで、コーエーテクモには、あまり注目していませんでしたが、『ワイルドハーツ』の素晴らしさに度肝を抜かれ、『ライズ オブ ローニン』をプレイして完全に考えを改めました。
これからはコーエーテクモの動向を注意深く見守っていきたいと思います。
猫好きゲーマーとしては猫についても触れておかねばなりません。
このゲーム、フィールドのあちこちに猫が潜んでいます。
猫の描写も丁寧で、作り手の『猫愛』をひしひしと感じます。
猫の毛色も白、黒、キジトラ、サバトラ、茶トラ、黒白、三毛など様々。
ただの色違いではなく、体形も数種類あります。
猫好きも満足できるクオリティー。
あらゆる所に手を抜かない姿勢が本当に素晴らしい。
白猫と黒猫は耳が不自然に大きく、痩せぎすな体形。
個人的には苦手なタイプの猫ですが、その他の猫は好きなタイプの猫が多く、大満足。
猫を発見する度に、じっくり眺めたり、添い寝したり、写真を撮影したりと、ゲームの進行が長時間ストップするほどの大騒ぎになりました。
フィールドで発見した猫に近づくと『撫でる』というコマンドが表示されますが、すぐに撫でるのは考え物です。『撫でる』というコマンドを実行すると猫を抱き上げることができますが、猫はすぐに腕からスルリと抜け出してどこかへ逃げ去ってしまいます。猫と過ごす楽しい時間は一瞬で終了。後悔しても後の祭りです。
猫と一緒にいる時間を長くしたいなら、『猫に触りたい!』という欲求をグッと抑え、(猫だって心を許していない初対面の相手に、いきなり触られるのはイヤなはず)とりあえず猫にゆっくり近づき、それから暖かい眼差しで見つめましょう。猫も見つめ返してくれます。そうして猫と見つめ合ったり、一緒に過ごしたりする時間を思う存分、まったり味わうことができます。三毛猫は特に用心深いので細心の注意が必要です。
ゆっくり、ゆっく~り近づかないと撫でる前に逃げ出してしまいます。
ゲーム中の三毛猫の反応こそリアルな猫の反応です。
猫が大好きな私は現実世界でも猫を見かけると近づかずにはいられませんが、大抵の猫は近づいただけで逃げ出します。子供の頃は猫に好かれる体質(?)だったようで猫の方から私に近づいてくることがよくありました。頭をこすりつけてきたり、まとわりついてきたりするので思う存分スキンシップが可能でした。大人になった今、猫は一切近づいてきません。
体質の変化?
それとも特殊スキルの喪失?
少年の天真爛漫さが失われ、つまらない大人になってしまったからでしょうか?
とにかく残念です……。
ちなみに『ライズ オブ ローニン』にはZバージョンと通常バージョンの二種類あります。
違いは人体欠損表現の有無です。
グロテスクな表現が嫌いな方は通常バージョンを購入しましょう。
私もグロテスクな表現は苦手なので通常版を購入する予定でしたが、どちらのバージョンも価格が同じで、Z版もゲーム内設定で欠損表現のON、OFFが切り替え可能ということなので試しにZ版を購入してみました。
欠損表現ONでプレイすると首や腕が吹き飛ぶ壮絶な戦いが繰り広げられます。
実際に剣の達人が真剣で人を斬ったらこうなってしまうんでしょうね……。
真剣で戦う恐ろしさや、戦いがどんな結末をもたらすかを理解できるという点ではZ版の存在価値もあると思います。でも、戦いの最中に敵の首を刎ねるという行為はリスクが高すぎるのではないでしょうか?
首の骨に刃が当たって刃こぼれする可能性も高いはず。
息の根を止めるには頸動脈や手首の動脈を斬れば十分。
なぜ執拗に骨ごと断ち切ろうとするのか?
想像していた以上に人体欠損の頻度が高いので私は欠損表現OFFでプレイしました。
いずれにしても様々な選択肢を用意し、最終判断をプレイヤーに委ねるという姿勢は素晴らしいと思います。
オンラインマルチは協力プレイが可能ですがモンハンのように長期間ガッツリ楽しめる内容ではありません。基本的には一人でじっくり遊ぶタイプのゲームです。
マルチプレイはオマケ程度と考えた方がよいでしょう。
評価
通常版
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Zバージョン
↓
↑
これが農家のプラモデルです!子供の頃に作りました!